部下育成におけるコーチング場面(例)
下記のダイアログは、部下育成におけるコミュニケーション方法の悪い例です。
上司: 「最近、調子はどうだい」
部下: 「はい、まあまあ順調です」
上司: 「順調か。相談したいこと、悩みごとは何かないのかね」
部下: 「いえ、別にありません」
上司: 「別にないって・・・本当にないの?」
部下: 「はい、まあ、これと言って・・・」
上司: 「これまで、何か相談したいと考えたことはなかったのかね?」
部下: 「いえ、まったくなくはないんですが・・・」
上司: 「何だ。あるんなら、なぜその時、言ってこなかったんだ」
部下: 「いえ、たいしたことではありませんので、なんとかなると思います」
上司: 「本当になんとかなるのか?」
部下: 「はい、大丈夫です」
上司: 「そうか、それじゃ、とにかく、がんばってくれ」
この例では、部下の話しを積極的に聴くというよりは、上司がまるで訊問でもしているかのようです。部下は緊張していて、安心して話せる状態ではありません。部下の、早く上司との会話を切り上げたい、と言う気持ちが伝わってきます。よくありそうな面談の場面です。
では、どのようにコミュニケーションすることで、部下育成の面談は効果的になるでしょうか? 部下のモチベーションを上げることができるのでしょうか?
以下の、コーチングを使った良いコミュニケーション例を読んでみてください。
上司: 「その後、D社との打ち合わせは、うまくいっているのかな?」
部下: 「はい、まあまあ、順調です」
上司: 「『まあまあ』ということは、何か気になっていることでもあるのかい?」
部下: 「まあ、特に大きな問題ではないかもしれませんが・・・」
上司: 「でも、多少は気になっていることがあるんだね?・・・たとえば?」
部下: 「実は、D社の担当のH氏が他のプロジェクトにかかりっきりで、自分との打ち合わせの回数が減っているんです。彼も気にしているんですが、どうにもならず・・・」
上司: 「回数が減っている・・・ということは?」
部下: 「十分な話し合いが出来ない前に、商品発注を推測して行うことになります」
上司: 「推測か・・・そうすると?」
部下: 「見込み違いで在庫を抱えることになるかもしれません」
上司: 「それを防ぐにはどうしたら良いと思う?」
部下: 「まずは、H氏の代わりに窓口になっていただける方がいないか、聞くことが出来ると思います」
上司: 「・・・なるほど、そこから始めてみようか」
部下: 「もしも、それで改善されなければ、別のやり方も考えてみようと思います」
上司: 「そうしよう。では、まずできることから実行して、報告してもらえるかな?」
部下: 「わかりました。早速とりかかります」
この良い例と悪い例では、どこが違うのでしょうか?良い例では、沈黙を織り交ぜながら、短い言葉で、相手の考えを促すように質問しています。それから「なるほど・・・」など、共感的で、部下が自由に考えることを受け入れる空気があります。お互いが協力的で、会話の雰囲気が暖かく、部下のモチベーショ ンが上がってきているのが分ります。
特に注目して欲しいのは、焦点をあてている言葉の部分です。悪い例では、上司が「順調」と言う部分を反復しているのに比較して、良い例は「まあまあ」と言う部分を反復し、「まあまあ」の持つ曖昧な部分を具体化するように質問しています。この部下としても「まあまあ」の部分にニュアンスを残した話し方をしていることから、できれば部下側から相談でもしたかったのではないかと覗えます。

